論文「テニスのグラウンドストロークにおけるショットのコンビネーションに関する実践知」を読んでみた
とりあえず新しめの物を読みたかったので、2018年の論文になります。
こっからから参考文献で面白そうなのを漁っていこうかな作戦です笑
テニスのグラウンドストロークにおけるショットのコンビネーションに関する実践知:国際レベルで活躍した女子テニスプレーヤーの語りを手がかりに
概要としては、国際レベルの日本人女子プレーヤーを対象としてインタビューを行い、シングルスにおけるストロークのコンビネーションを考察した論文、と書いてあるのですが、最終的に戦略の志向性を分析・考察しています。
インタビュー対象の選手(4名)
不田涼子 選手
自己最高世界ランキングシングルス 143位,右利き
赤堀奈緒 選手
自己最高世界ランキングシングルス 349 位,右利き
竹村りょうこ 選手
自己最高世界ランキングシングルス 325 位,右利き
佐伯美穂 選手
自己最高世界ランキングシングルス 56 位,右利き
インタビューの内容は普通に面白く、読みやすい内容になっていたので、興味のある方は原文を読んでみるのも良いと思います。
原文はこちら。
テニスのグラウンドストロークにおけるショットのコンビネーションに関する実践知:国際レベルで活躍した女子テニスプレーヤーの語りを手がかりに
※P4 「Ⅲ 結果」参照。
それぞれの得意パターン(ショットのコンビネーション)が記載されていたので、それは別途まとめられれば、と思ってます。
インタビューからの考察
論文の考察をざっくりまとめます。
行動戦略志向
まずは、選手の行動戦略を以下の2タイプに分けられるというお話。
この考えを元にグランドストロークについて考察しています。
「対応しようとする行動戦略志向」(受動型)
常に相手を観察し、相手の打球を予測しながら自分の動きを決定する志向タイプ。
攻撃を仕掛けるために相手の体勢良し悪しを重視する。
「対応させようとする行動戦略志向」(能動型)
自分の打球に相手を対応させて、自分が事前に決めていた行為(得意ショットでの攻撃)を実行する志向タイプ。
2つの戦略行動志向の共通点
クロスラリーからストレートへ転じるタイミング
- 相手を攻撃する時
- ラリーの均衡状態を打破したい時
準備局面の重要性
- ストレート/クロスのどちらへも打てるフォームでボールへ入ろうとする
コースの打ち分け方法
- 打つ前にタメを作り、そのタメ長さによって打点を前後に調整する事で、打ち分けている。
- 例えばバックでストレートに打つ場合は、タメの時間を長くして打点を後ろにする。
2つの行動戦略志向に見られるグラウンドストローク動作におけるコツ
対応しようとする行動戦略志向
- 準備局面を重視。
- ボールに入ってテイクバックまでの準備を重視している。
対応させようとする行動戦略志向
- 主要局面を重視。
- インパクトの感覚を重視してる。
読んでみて、のまとめ
これを読んで最初は、対応させようとする行動戦略志向 / 対応しようとする行動戦略志向 のどっちもやればいんじゃね?と思ったんですが、あくまで「志向」なので、どちらかというとそうゆう戦略で動いています、という話。
実際は、自分の有利になるような打球を相手に送り、相手を観察して、チャンスを逃さないように準備する、というように両方の戦略を使用して試合を組み立てていくことになると思います。
この論文で面白いのは「自分の有利になるような打球を相手に送り、相手を観察して、チャンスを逃さないように準備する」という、動作を分離して2つの要素に分割しているという点。
これによって、
- 自分に有利になるような打球を相手に送り、チャンスボールを引き出す。
- チャンスボールを逃さないように相手を観察し、準備動作が遅れないようにする。
に分けられるので、それぞれ意識して練習ができますね!というのが収穫だったかなと!
論文「硬式テニス男子シングルスの戦術に関する一考察」を読んでみた
テニスのゲームを取るために重要なカウント ~ ラリー初期段階におけるポイント取得について ~
ラリー初期段階でのポイント取得率は本当に高いのか?
ラリー初期段階ではどんなパターンでポイントが決まっているのか?
について研究した論文です。
分析方法
以下2大会のポイント取得までのラリー数とコースを分析。
- 2006年 マスターズカップ 男子シングルス 15試合
- 2007年 インカレ(4回戦以上) 男子シングルス 15試合
レベルに関わらず、ラリー数とポイント取得に相関があるかを見たかったため、トッププロと学生を分析対象としたそうです。
(ただ、インカレレベルには到底及ばない週末プレーヤーの自分に、この結果は使えるのかは疑問)
研究内容
研究内容は以下の2点。
1. ラリー数とポイント取得の相関
ラリー数とポイント取得は関係がある(ラリー初期段階の方がポイントが決まりやすいんじゃね?)という仮説を、データを集めて検証。
結果としては、相関あり。
ラリー3球目まで(サーブ、レシーブ、もう1球まで)にポイントが決まる確率が高かったとのことでした。
2. ラリー初期段階での有効なコース
ラリー3球目まで(サーブ、レシーブ、もう1球まで)に着眼点を絞ってポイントを取得するために有効なコースを調査。
こちらの結果はざっくりこんな感じ。
・サーブ(1球目)は、ボディに比べてワイド・センターの方がポイント取得率が高い。
・リターン(2球目)は、サイドに関わらずストレートへの返球のポイント取得率が高い。
・3球目は、オープンコートへの返球のポイント取得率が高い。
つまりこんな感じ。
基本的に相手のいないオープンコート側に打っていくため、ポイント取得率が高いのは納得ですね。
また、面白いなと思ったのが、デュースサイドのフォア順クロスのリターンミス率が他に比べて多かった点ですね。
比較的ミスしづらいショットだと思っていたのでこれは意外でした。
ではでは。
論文「テニスのゲームを取るために重要なカウント」を読んでみた
テニス関係の論文って案外あるんですね。
鹿屋体育大学の論文で「テニスのゲームを取るために重要なカウント」というのを読んでみました。
2006年の論文なので少し古めですが、面白い内容が載っていたのでご紹介。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/51/1/51_1_61/_pdf/-char/ja
概要
とある男子シングルスの大会にて、1ゲーム内のカウント/ポイントのデータを集計・分析し、ゲームを取得したプレーヤーのポイント取得率が高い/低いカウントを調査したものになります。
収集データ
- 1997年~1998年に行われた「九州学生大会本大会 男子シングルス」の試合、全てのラウンドを対象。
- 対象とした試合数は42試合,選手数は84名。
- タイブレークは分析対象から除外。
- 総セット数 102セット,総ゲーム数 907ゲーム,総ポイント数 6,058ポイント。
結論
論文の結論をざっくりまとめるとこんな感じ。
- 全ポイントの2/3はゲーム取得プレイヤーが取得している。(注意:試合勝利プレイヤーではない)
- ポイント差がある場合は、リードされているプレーヤーのポイント取得率が比較的高い。(特に 0-15, 15-30)
- 30-30, Deuce のポイントを取得したプレーヤーがゲームを取得する確率が高い。
考察
論文を読んでの自分の考察です。
30-30, Deuceが大事というのはその通りだと思います。自分の肌感覚とも合う。
気になったのが「40のいずれのカウント(40-0, 40-15, 40-30)でも、ゲーム取得プレーヤーのポイント取得率が平均より低かった」という点。
実際の試合では40を取り、ゲームポイントを握った時点で「チャンス!」と感じる人が多いですが、そのゲームポイントを取得できる確率はあまり高くない事を肝に銘じてポイントに臨むべき。
という事がこの論文を読んで一番学んだことになります。
ではでは。